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磁針 -コラム-

”磁針”は日刊紙”羅府新報”に掲載されるコラムです。

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[38] 頑張れジーン  2011/03/22 15:12:30
掲載日:10/21/1997  E-Mail  Home
 14年来のアメリカ人の友人にジーンがいる。

 彼はイタリア系だが、イタリア系にしては理屈っぽく議論好きで、ガレージにも居間にもうず高く本を積んでいる。奥さんのリリーは底抜けに明るく、人が好きで旅先でもすぐ人々に話しかけ、誰とでも親しくなっていた。また、皆で集まってワインを飲み、興に乗るときれいなソプラノの唄声を聴かせた。

 初めて会った頃、ジーンはすでに喉頭ガンで半分声帯を取り、喉に穴を開けて、そこに笛のような金属製のパイプを差し込んで話をしていた。やがて喉頭ガンが進行したのだろうか、完全に声帯を取ってしまい、舌の上にプラスチック製のパイプを乗せて、ロボットのような音を出す発声法に変わった。思うように話せないジーンはリリーに通訳をさせ、苛立って彼女に当たることもあった。それにもめげず、常に陽気なリリーであったが、5年程前にあっという間にこの世を去ってしまった。

 やがてジーンは足の痛みを訴え、脇腹にも痛みを感じるようになった。外出がままならず、言葉も思うように話せなくなったジーンは、一人家にこもることが多くなり、殆ど外出はしなくなった。私たちとの会話も筆談が主になった。

 体の不調を訴えていたジーンが病院でテストを受けるという。知り合いの医者に頼んで病状を聞いてもらった。結果はガンが体中に広がった末期状態で、手術も無駄、治療も望みがない、命はあと3ヶ月、あとは如何に安らかに命を終えられるかだという。

 ホスピス、ライフタイムケアなど余分なお金のないジーンの為に何か出来ることはないかと思い悩みながら3ケ月が経った頃、隣りに住んでいるヘレンから電話がかかってきた。一瞬どきっとした私は、次の言葉を聞いて我が耳を疑った。ジーンが親しい人を招いてスパゲッティディナーを振る舞いたいとの招待の電話だった。

 その日、10人程の人達が集まった。贈られた花で飾られたテーブルを囲み、ジーンは幸せだった。食後、男達で庭に出て1時間以上もの立ち話に疲れた顔も見せなかった。医者に宣告されたタイムリミットはとっくに過ぎている。しかし信念を持って生きようとしている人間には、医学では計り知れない生命力が湧いて来る。

 この日のジーンを見ていると奇跡としか思えない。まだ大丈夫、頑張れジーン。自分で生きる道を切り開け!
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