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磁針 -コラム-

”磁針”は日刊紙”羅府新報”に掲載されるコラムです。

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[28] 武士の娘  2011/03/22 15:04:51
掲載日:03/25/1997  E-Mail  Home
 海外へ出ると国内にいる時よりも日本や日本人について考えさせられることが多い。それは外国の様々なものを見て比較するからであり、外国人に聞かれるからであり、自分自身が自分のアイデンティティーを求めるからである。

 筑摩叢書から刊行された「武士の娘」という本がある。著者は杉本鉞子(えつこ)で、明治六年長岡藩の家老、稲垣家に生まれた。明治維新の嵐の中、武士の伝統の色濃い家庭で厳しい教育を施された著者は、やがて兄の親友でアメリカ東部で貿易商を営む杉本氏の嫁ぎ、単身アメリカへ渡る。

 行く先々で初めて見聞する異国の風物、習慣、投げかけられる様々な日本への質問は、深く日本を見つめ直すきっかけとなる。六歳の頃より四書(大学、中庸、論語、孟子)を学び、祖母や乳母、召し使いから様々な物語を聞かされて育った著者は、そのたび毎に日本を振り返り、アメリカと比較し、納得行くまで日本を考える。そして見つけたものは、古い封建制度の中で様々な旧弊、悪習もありながら、全体的には人々が各々の立場と身分で身を律し、義務と責任を果たしてゆく中で、身分の上下を超えた心の通い合い、思いやりのある世界だった。

 周りはすべてアメリカ人という環境で、この日本への鋭い洞察と愛着と誇りを持つが故に、周囲の人々に真率に対応し、アメリカという偉大な国にへつらうことなく、控え目ながらも日本の良いところは良いところとして主張する。その率直さのため、多くの人々に受け入れられ、愛されてゆく過程をみるとまさに国際化とは外国に迎合するのではなく、他を尊重しながら自分を主張するかと思い知らされる。

 そのしみじみとした語り口の中に、我々は科学が進歩し、経済が発展する中で、多くの日本の良きものを失ってきたのではないだろうかという思いがよぎる。

 戦後五十年、日本が新しい曲がり角に立ち、政治も経済も方向性を失って混沌とする中、明治維新の動乱期にアメリカに渡り自分を見失わず生き抜いた一人の女性の生き様は、私達の指針ともなるのではないだろうか。

 ちなみにこの本は英語で書かれてドイツ、フランス、デンマーク、スエーデンなど9ヶ国語に翻訳されたという。
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